『うたわれるもの』第13話

第13話「血塗られた戦い」。遅れ気味なので、ちょっと12話を飛ばして13話の感想を書いてしまいます。


Aパート前半あたりのような展開が好きだー。ハクオロとエルルゥ(とアルルゥ)の関わりの場面が。あーだめだ、こういうのに弱いんだよ。
一対一の対話の、感情の細かい揺れを好感するような場面が好きなのだと思う。思えば『なのは』感想でも、そういう部分は力を入れて取上げて書いていたように思う。
ハクオロが酒を飲む場面。顔の近くにカメラアイが設定される、表情のアップが多い、そういうものが主にこのシーンを構成している。つまりは細かい感情の変化、機微が表現されている。瞳の動きやゆらぎ、眉、口元、髪の揺れが、感情を構成している。人物アップの表現、それは状況を説明してその中でキャラクターが動くという構図ではなく、そのキャラクターがどのような状況にいるのかはあまり関係なく、彼ら同士の間を動く感情の流れが場面の中心になって、力を持った表現となっているということだろう。まず世界があってその中でキャラクターが生きるというのが基本だと思うが、そういう格を外れた、止めることの出来ない感情が先走るエモーショナルな魅力が、こういう巧みな視点の配置の仕方で生まれているんじゃないかなと思う。
現実の人間が演じるよりも、二次元の単純なシンボルに置き換えられ、それによって現実が再現(現実を模倣するのではなく)されることにより、現実以上のリアリティを持った感情の動きが生み出されているのではないだろうか。だからアニメって好きだ。無論、現実には描きがたい壮大な、もしくは激しい、例えば戦闘シーンなども醍醐味なのだけれど、それと同じくらいに、このような静かな表現に魅力を感じる。

エルルゥ「私がハクオロさんを怖いと思うなんて、絶対ありません。大丈夫です。大丈夫…。」
ハクオロ「…私は…。」

思わずハクオロの手に自分の手を重ねるエルルゥ。我に返り飛びのくエルルゥの手を強引に引き寄せその方を抱くハクオロ。ハクオロからの謝罪の言葉と共に、解放されるやいなや立ち去るかと思いきや、彼を背中から抱き、ささやきかけるエルルゥの横顔の美しさは言葉にすることが出来ないなと思います。この流れの中でしか表現し得ない感傷のように思いました。


その後の場面、ハクオロにまとわりついてはしゃぐアルルゥムックルを眺めていた刹那に、思いがけなかった自らの涙に気づいたエルルゥがいたけれど、偶然にもほぼ同じタイミングで自分も涙ぐんでいたのには、少しばかり驚いた。涙もろくなったというか、感情移入しやすいヤツだなと自分のことを思う。補うならば、ゲーム版を終えていたから、この先の展開を知っていたから、この場面のエルルゥの抱いていた、決して表に出すことはない想いを想像しやすかったから、ここまで入り込めたということもあるかもしれない。
特にここ。
「私は…」「私は君に…」と言いかけてその後を継がないハクオロ。

ハクオロ「君は、どうして…」
エルルゥ「え?」
ハクオロ「私を支えてくれるんだ。私は君に辛く当たってばかりいる。」
エルルゥ「それは私が…それは…。…覚えてますか。ハクオロさんは私たちのこと『家族』っていってくれましたよね。それが理由じゃだめですか?」

うーん、深い…んじゃないんだろうか。
ここ、鳥の声と風を背景に、エルルゥが隣にいるハクオロを見上げ、「え?」の疑問の表情がそのまま一瞬固定し、そして嘆息とわずかな沈黙。変化していく様の描写がたまらなくいい。もう私のツボつきまくり。涙をこぼすエルルゥがたまらずにいとおしく、裾でそれをぬぐうしぐさはかわいらしい。


さて後半、戦のシーン。
アルルゥの「ごはんまだ」とか、カミュの「おねえさまぁ」などのコミカルなとことか、戦闘の視界も広くなってスカッと抜けたような雰囲気が前半との対比で非常に気持ちいいですね。
トウカが動く動く。大変爽快。包囲された時の、周囲をうかがう目の動きも鋭くいい。素早い立ち居振る舞いの時のブレもグッと来る。


あーそうそう、「カーッカッカッカッ」っていう笑いは、文字じゃなくて音にすると、いい様のない違和感を感じさせるよね(笑)。